いかにして中国大陸と香港における企業所得税(利得税)の二重課税を避けるか。
中国大陸と香港の経済的統合に従い、二重課税を避けるためのニーズが高まっている。以下は初歩的紹介にすぎないが、より詳しい内容については、公認会計士、香港税務局(「IRD」)またはAPEX Accountantsまでお問い合わせください。

ここにある資料のすべてはIRDが公布した『香港税務条例解釈及び執行指導第32号』の『中国大陸と香港における二重課税回避についての手配』(以下『ADTI』とする)を参考にしたものだ。ADTIは1998年4月1日又はその後の課税年度の所得に適用し、大陸では、1998年7月1日又はその後の所得に適用する。 


1.「地域税源」の税収原則


香港は「地域税源」を税収原則としている。香港で発生し又は香港から得た全ての利益に対して利得税を徴収するが、香港以外の地域で得た利益に対しては、課税しない。


2. 「住民」の定義


『ADTI』は大陸と香港又は大陸と香港の二重住民籍を持つ住民に適用する。『ADTI』第六条によると、「住民」とは双方の法律に従い、住所、居所、実際管理機関または本部の所在地または他の類似基準によって片方で納税する人を指す。ここの「人」は一個人、会社または他のグループを含む。ここで検討するのは、会社であって個人ではない。


(1) 「会社」住民


会社とは法人グループまたは税務上法人グループとみなされる実体のことを指す。『ADTI』または『税務条例』(第112章)では、会社住民についての定義が見られない。判例によると、香港会社住民とは、本部が香港にある会社を指し、即ち会社が実際に業務経営する場所のことを指す。本部所在地の判定は、完全に事実推定によるしかできない。


(2)「グループ」住民


『ADTI』第七条にある「住民」定義には「他のグループ」も含まれている。IRDは「他のグループ」を税務上独立課税対象とみなしている。たとえば、「パートナーシップ」など。IRDは「パートナシップ」の管理及び制御が実際に届く場所を「住民地」とみなしている。


(3) 住民身分の認定


『ADTI』の適用を申請するにあたって、申請者は住民証明書の提出を求められる可能性がある。このとき、申請者は所属住民地の税務機構に「住民身分証明書」を申請しなくてはならない。証明書を提出できない場合、『ADTI』の適用対象になれない。


中国大陸の県(市)またはその上級主管税務機構が香港住民に証明書類の提出を求める場合、IRD宛ての文書(『香港特別行政区税務主管当局住民証明提出についての文書』)を申請者に交付する。この文書は、記入済みの「住民証明書申請表」とともにIRDへ提出する。住民証明書申請表はIRDに請求できる。

IRDは申請資料に基づいて検証をし、「住民身分証明書」を交付する。申請が受理されない場合は、別ルートで申請者に知らせる。


3 『ADTI』が適用する税目

中国大陸 香港

『ADTI』は

  • 個人所得税
  • 外商投資企業所得税
  • 外国企業所得税(多国間会場運輸、航空運輸及び陸上運輸企業の営業税を含む)

『ADTI』は

  • 利得税
  • 賃金税
  • 個人利息税

4 企業の概念


『ADTI』には「企業」の定義がない。「企業」については、香港と大陸が各自の法例に従って解釈している。

中国大陸 香港

『ADTI』は以下の定義に適用する。

  • 企業」とは、法律に従って成立し、営利を目的とする生産、貿易または他の活動に従事し、利益を獲得する経済組織を指す。
  • 企業」は独立採算しまたは損益自己責任を持つこと。 『ADTI』は以下の定義に適用する。

『ADTI』は以下の定義に適用する。

  • 生産、貿易といった、経営または商業に従事するいかなる活動でも、「企業」となる。
  • IRDでは、会社または他のいかなる団体でも企業と見なされている。 

5 『ADTI』適用申請の資格及び期限


香港住民が『ADTI』の適用を申請する場合(税額控除を含む)、当該課税年度の利得税申告表記入とともに申請でき、もしくは当該課税年度終結後2年以内に書面申請を提出できる。申請時に、二重課税所得の性質、大陸で課税済み所得の種類と控除の申請額を明記し、大陸の納税通知書及び税金払込証明書を添付しなくてはならない。但し、関連課税年度において、申請者は香港住民身分を持たなくてはならない。


関係申請を提出した後、二重課税金の納入時利息と払込税金額に変更がある場合、申請者は関連資料を書面でIRDに通知し、改正しなくてはならない。


6 「常設機関」の概念


常設機関とは、企業が全部または一部の営業活動に利用する恒久的固定場所を指す。香港企業が大陸に常設機関を設立する場合、大陸税務機関が香港企業に対して課税権を所有する。但しその課税対象は大陸の常設機関の利益にかぎる。


(1) 常設機関の特徴:


一般的にみれば、常設機関は、以下の条件を備えている。


(a) 営業活動を営む場所であること。
(b) 固定的、恒久的場所であること。
(c) 全部または一部の営業活動を上述の場所で行われること。


(2) 常設機関にならない活動


固定場所における活動が準備的または補助的で、直接に企業に利益をもたらさない場合、当該場所は常設機関として見なされない。これらの活動に以下のようなものがある。
(a) 貯蔵用、陳列用または企業貨物または商品交付用の施設。
(b) 以下の目的で企業の貨物または商品を保存する場所。
(i) 貯蔵、陳列または交付用場所
(ii) 他企業製品加工用場所。
(c) 以下の目的で設立する固定営業場所
(i) 貨物または商品調達、もしくは広告または資料収集用場所
(ii) 他の準備的または補助的活動を行う場所
(iii) (a)、 (b)(i)、b(ii)、(c)(i)及びc(ii)を総合した活動は全体的には準備的または補助的活動に属す。

7. 事務所


事務所の行う活動が以下の範囲内にある場合、常設機関としては見なされず、課税対象にならない。
(1) 所属企業にサービスを提供する場合;
(2) 提供するサービスが直接に営利しない場合;
(3) 一般的支援活動を行う場合。但し、所属企業のために、監督管理または業務運営管理機能を果たす場合、支援活動とは見なされない。このとき、当該固定営業場所は常設機関と見なされる。


8. 原料加工


香港メーカーと大陸企業が締結する原料加工契約は、以下の二形式がある。

(1) 大陸企業と協力しての経営、請負


香港メーカーが原料、技術、デザイン、教育訓練、管理、監督を提供し、大陸企業が加工、製造または組み立てに必要な工場、土地と労働力を提供する。実際、当該大陸加工機構は、香港メーカーの独立下請人であるため、香港メーカーが商品販売から得た利益を分割する必要もなく、全部利得税の課税対象にされるべきであるが、IRDは優遇政策を取り、50:50の比率で利益を分割してから香港での利得税金額を計算する(本文第15の税額控除関連資料を参照)。『ADTI』が発効した後も、IRDは上述の方法で香港メーカーに課税する。


(2) 独立下請人
香港メーカーが加工過程を大陸の独立下請人に下請させ、関連費用も各自で処理するため、大陸における加工過程は香港メーカーの営業活動とは見なされない。大陸下請人は下請によって得た所得は、大陸企業所得税の課税対象になり、香港メーカーが商品販売から得た所得は、利得税の課税対象になる。


9. 建築現場、建築、組立工事


『税務条例』(第112章)の規定によれば、いかなる人が香港の建築工事から得た所得でも、施工時間の長短を問わずに、利得税を納税しなくてはならない。『ADTI』が発効した後、大陸住民が香港で請負った建築工事の連続作業時間が6ヶ月または6ヶ月を超える場合、工事全体が利得税の課税対象になる。但し連続作業時間が6ヶ月以下の場合、当該工事は香港の常設機関とは見なされないが、その利益は課税対象になる。同じように、香港住民が大陸で請負った工事の連続作業が6ヶ月以下の場合も、同等の待遇を適応する。工事作業時間は以下のように計算する。


(a) 着工日から(すべての準備活動を含む)作業が終了し、使用者に交付する日まで。
(b) 二つの年度をまたがる場合、繰越計算とする;
(c) 連続で同じ建築現場または同じ工事の二つ以上のプロジェクトを請負う場合、最初の        プロジェクトの着工日から最後のプロジェクトの終了日までの期間を連続で計算し、プロジェクト別で計算してはならない。
(d) 異なる工事、異なる地点での工事は、別々で期間を計算する。


10. 企業による従業員提供


12ヶ月以内に、香港企業が6ヶ月連続で従業員または他の雇用者を同じプロジェクトまたはその関連プロジェクトにコンサルティングサービスを含んだ従業員を派遣する場合、中国大陸では常設機関と見なされる。企業の従業員提供によって得る全ての所得が、課税対象になる。コンサルティングの範囲は以下のようである。


(1) 工事建設または企業現有の生産設備または製品技術の改良、選択または経営管理の改善への協力。
(2) 投資プロジェクト実行可能性分析及びデザイン案の選択。


11. 営業代理人

非独立代理人 独立代理人

非独立代理人(すべての活動が香港企業によって管理される)が長年にわたって当該企業を代表して中国大陸で活動を行い、契約条項商談を含む契約締結権を持つ場合、契約の最終的署名者でなくても、当該非独立代理人は香港企業の中国大陸における常設機関と見なされ、中国大陸の税法で課税される。

 


香港企業が独立代理人を通して中国大陸で活動を行う場合、その代理人が当該企業の全部またはほぼ全部を代表しなければ、当該企業は常設機関と見なされない。

 

12. 営業利益
中国大陸 香港

利益とは、企業が直接経営活動を行って得る全ての利益を指す。

 


利益とは、企業が一般認可会計原則と税務条例規定によって計算する営業利益を指す。

 

13. 投資による間接所得

中国大陸に常設機関を持つ香港企業 中国大陸に常設機関を持たない香港企業

香港企業が中国大陸における投資による間接所得、たとえば不動産所得、賃貸所得及び資本的財政収益などが営業利益と見なされ、企業所得税の課税対象になるか否かは、当該所得が中国大陸の常設機関または固定基地経営業務を通して得た所得かどうかによって決まる。

 


中国大陸で得た投資間接所得は、中国大陸税法にしたがって所得税を納税しなくてはならない。

 

14. 海上運輸、航空運輸と陸上運輸


(1) 海上運輸


(a) 『ADTI』によれば、香港は香港海運企業の海上運輸業務所得に対し課税権限をもつ。よって、当該企業の中国大陸における関連所得は、大陸では所得税と営業税を免除される。
(b) 税務条例(第112章)第23B条目の規定によれば、香港の海運企業の香港から得た海運利益を計算するとき、香港の登録船舶の香港水域以内における船積料または引船料に対しては、利得税を課税しない。
(c) 香港海運企業の船舶が香港水域と中国大陸対外貿易水域を運航する料金の半分に対して課税する。『ADTI』が発効後も、上述の所得は香港における課税を免除される。


(2) 航空運輸


(a) 『ADTI』によれば、香港は香港航空運輸企業の航空運輸業務所得に対して課税権限をもつ。よって、香港企業の中国大陸における関連運輸と航空機賃貸による所得は、中国大陸では所得税と営業税を免除される。
(b) 『税務条例』(第112章)第23C(2A)条目の規定によれば、当該関連所得は、「関連所得」として、香港で利得税を課税される。


(3) 陸上運輸


(a) 『ADTI』によれば、香港の陸運企業が国際または多地域間陸上運輸業務を展開する場合、香港で課税される。中国大陸では所得税と営業税を免除される。
(b) 中国大陸と香港間の地域間陸上運輸は「合作企業」形式で業務展開する場合が多い。即ち香港側が自動車と資金を提供し、大陸側が証明書、車ナンバープレート申請、納税とその他管理サービスを提供する。このような「合作企業」は双方住民が連携で経営する多地域間運輸業務で、香港側がそれによって得る所得は大陸では税金を免除される。しかし当該所得は香港陸運企業の所得に含まれ、香港で課税対象となる。


15. 税額控除


(1) 香港企業の香港で得た所得は、香港の課税対象となる。但し以下の情況を除外とする。


(a) すでに中国大陸で納税した場合、当該税額は香港では控除される。しかし控除税額は、『税務条例』(第112章)規定によって計算する課税額を超えてはならない。
(b) 免除対象にならない税額は、他の課税年度に繰り越してはならない。
(c) しかし関連課税年度で当該企業の未払税金がない場合、例えば当該年度で赤字である場合は、中国大陸で徴収される税額は、控除対象にならない。他の課税年度に繰り越してはならない。


(2) 香港メーカーの利益が50:50の比率で香港と中国大陸から得た場合、大陸で徴収された税額は、香港では税額控除対象にならない。中国大陸で徴収される利益額が利益全体の半分を超えた場合、その超えた分の納税額が、税額控除の対象となる。


16. 中国大陸の税金徴収額が『ADTI』規定に適合しない場合の対応手順


中国大陸の税金徴収額が『ADTI』規定に適合しない場合、以下のように対応する。


(a) 中国大陸税法の規定手続き及び期限に従って納税通知下達の税務機構に異議を申し立てる。
(b) 正常手続きで解決されない場合、IRDに申請を提出し、双方の主管当局が協商して解決する。

   
   
   

 

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